シャトー・ムートン・ロートシルト 1996

1996年は、季節平均を上回る気温を観測した温暖な年で、幾度かの雨にも恵まれ、ブドウ樹は均質な生育を得ています。年始2ヶ月間は降水量が多く、その後3月および4月は気温も高く乾燥した月になりました。

植物生育サイクルは早めのスタートを切り、萌芽は4月14日に記録されています。5月の天候の特徴は、低温と高温が交互にやってきた点でした。5月末には乾燥した暑い日が続き、同様の天候が夏いっぱい継続しました。植物生育の進度は早まり、開花初期に取っていた遅れを挽回することが出来ました。

花の時期は、5月29日から6月12日にかけて均質に進み、着色は平年より10日ほど早めの7月17日から8月20日に広がっています。

8月、収穫の品質ポテンシャルは極めて高く、偉大なるヴィンテージが期待されました。9月頭には幾度か降雨がありましたが、その後は北からの風まじりの乾燥した天候が継続しました。かくして、完璧な衛生状態の、秀逸な品質のブドウ果実が醸造タンクへと運び込まれています。

美しい赤色の外観。縁部分は若干オレンジ色かかっています。グリオット種チェリーやブラックベリーを思わせる黒果実が特徴的な、濃厚で開いた香り。同時にスギ、フレッシュミント、よりフローラルなノートが感じられます。樽香は完璧に一体化しています。味わいは芳醇で、最初の段階から粘性の高さと見事な濃さを感じさせます。味蕾に広がるアロマの深みは特筆に値します。風味には厳格さも見られ、上質かつなめらかな織り目のタンニンを含みます。フィニッシュ直前には統制された力強さを感じさせ、その後は柔らかさが広がります。

ラベル作品担当
古干/グー・ガン (1942〜)
古干は、1942年、湖南省長沙市生まれの中国人画家・書道家。一時期は健康問題が原因で中断せざるを得なかった美術の勉強を、60年代に北京にて再開し修了します。首都公的機関での就職が約束されていましたが、文化大革命により職を失い、その後10年間は印刷所の作業員として働くことを余儀なくされました。毛沢東の死去、そして1976年、『四人組』の失脚・逮捕を受け、再び美術の世界へと返り咲きました。その当時、古干は、当時の中国ではほとんど無名であったカンディンスキーやクレー、ミロの作品と衝撃的出会いを果たしています。

1985年に北京で催された『近代書道展』発案者のひとりとして活躍。1987年および1989年と2回ドイツを訪問し、西欧諸国においても画家としての知名度を高めていきます。1993年、ケルンにて彼の作品の大規模展覧会が開催されます。現在は北京に暮らし、『中国近代画家・書道家協会』の会長を務めます。古干の作品は、今では中国国内はもちろん、西欧諸国の多くの美術館(大英博物館、ケルン美術館など)で展示されています。

もともとピクトグラムである中国書道は、紀元前2000年から現代に伝わる伝統芸術です。言語であると同時に芸術作品であり、書かれる言葉が意味を成す過程には、常に文字としての視覚的な美しさが追求されてきました。古干はこのような伝統を継承しつつも、根本な改革を加えます。かくして、書道に色彩を導入し、伝統が重んじる均衡と数々の掟の束縛から開放し、絵画の域へと達した書道作品は、装飾美術としての地位を確立したと言えます。

今ではもちろん書道の大家として、また、書道芸術の主要理論家として知られ(The Three Steps of Modern Calligraphy、1990年)、中国の伝統文化と西洋抽象美術の橋渡しとなる書道作品を制作し続けています。

1996年ムートンのラベルには、5つのイデオグラム(表意文字)が描かれています。いずれも『心』を意味し、それぞれ異なる色彩と描線で表現されています。強靭さと繊細さが重なり合った構図をアーティストは『心と心』と名付け、普遍の調和に築かれた信頼関係が表現されています。

【ブドウ品種】 カベルネ・ソーヴィニヨン 77%、メルロー 13%、カベルネ・フラン 10%
型番 BORCMR-05
在庫状況 在庫 1
販売価格
110,000円(内税)
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